熱中症に付いての注意と対処法    2005.7.30

@ 熱中症搬送数20年で2倍に
           ヒートアイランド調査

 環境省は二十九日、都市中心部の気温が上昇するヒー
トアイランド現象による環境影響調査結果を発表した。
横浜市など七地域では、一九八〇年から二十年間で熱
中症のため救急車で搬送された患者の数が二倍程度に
増えるなど、気温上昇による影響が深刻になっている
としている。

 対象は東京都の区部、市部と、川崎、横浜、名古屋、
大阪、広島の五政令市の計七地域。各地域で熱中症の
増加がみられる気温(二八−三一度)を超えた二〇〇
〇−〇四年の五年間の累計時間や熱中症による救急搬
送数(推計)を二十年前と比較した。

 それによると累計時間は一九八〇−八四年の二・〇
倍の千九百二十一時間となった都区部など七地域とも
一・五−二倍に増えていた。二〇〇〇−〇四年の五年
間の熱中症による救急搬送数(推計)は、都区部では
八〇−八四年の二・三倍の千六百六十九人、横浜市で
は二倍の八百七十六人となるなど、七地域とも一・五
−二・三倍の水準で増加していることが分かった。

 ただ、〇二年の名古屋市の救急搬送数を八年前と比
較すると、気温三〇度以上の時間数が同じでも搬送数
が増加する傾向がみられ、環境省は「安易に救急車を
呼ぶようになったか、暑さへの耐性が弱くなっている
のではないか」と分析している。

A 熱中症とは
 熱中症とは、体の中と外の"あつさ"によって引き起こされる、様々な体の不調であり、専門的には、「暑熱環境下にさらされる、あるいは運動などによって体の中でたくさんの熱を作るような条件下にあった者が発症し、体温を維持するための生理的な反応より生じた失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの、連続的な病態」されています。
(熱中症という漢字には、読んで字のとおり、「熱に中る」という意味をもっています。)

 熱中症は、熱波により主に高齢者に起こるもの、幼児が高温環境で起こるもの、暑熱環境での労働で起こるもの、スポーツ活動中に起こるものなどがあります。
 労働中に起こるものについては、労働環境改善などにより以前に比べ減少してきているとされていましたが、近年の環境条件により増加傾向が伺われます。また、スポーツなどにおいては、一時増加傾向にあり、その後減少に転じましたが、下げ止まりのような状況になっており、依然、死亡事故が無くならない状況にあります。

 熱中症というと、暑い環境で起こるもの、という概念があるかと思われますが、スポーツや活動中においては、体内の筋肉から大量の熱を発生することや、脱水などの影響により、寒いとされる環境でも発生しうるものです。実際、11月などの冬季でも死亡事故が起きています。また、運動開始から比較的短時間(30分程度から)でも発症する例もみられます。


B熱中症の分類
T度 軽症度 四肢や腹筋などに痛みをともなった痙攣
(腹痛がみられることもある)
○多量の発汗の中、水(塩分などの電解質が入っていない)のみを補給した場合に、起こりやすいとされている。
○全身の痙攣は(この段階では)みられない。

失神(数秒間程度なもの)
○失神の他に、脈拍が速く弱い状態になる、呼吸回数の増加、顔色が悪くなる、唇がしびれる、めまい、などが見られることがある。
○運動をやめた直後に起こることが多いとされている。
○運動中にあった筋肉によるポンプ作用が運動を急に止めると止まってしまうことにより、一時的に脳への血流が減ること、また、長時間、あつい中での活動のため、末梢血管が広がり、相対的に全身への血液量が減少を起こすことによる。
U度 中等度 めまい感、疲労感、虚脱感、頭重感(頭痛)、失神、吐き気、嘔吐などのいくつかの症状が重なり合って起こる
○血圧の低下、頻脈(脈の速い状態)、皮膚の蒼白、多量の発汗などのショック症状が見られる。
○脱水と塩分などの電解質が失われて、末梢の循環が悪くなり、極度の脱力状態となる。
○放置あるいは誤った判断を行なえば重症化し、V度へ移行する危険性がある
V度 重傷度 意識障害、おかしな言動や行動、過呼吸、ショック症状などが、U度の症状に重なり合って起こる
○自己温度調節機能の破錠による中枢神経系を含めた全身の多臓器障害。
○重篤で、体内の血液が凝固し、脳、肺、肝臓、腎臓などの全身の臓器の障害を生じる多臓器不全となり、死亡に至る危険性が高い。


C応急手当と対処
 熱中症にかかった者が発生した際の対応として、準備しておくことなどについてです。
 
 救急・医療機関との連携
 事例を読んで頂ければわかるとおり、死亡事例の中には、医療過誤によるものも発生しています。意識障害を伴いような熱中症(V度程度)においては、迅速な医療処置が、生死を左右します。また、発症から20分以内に体温を下げることができれば、確実に救命できるともいわれています。

 実際、熱中症になった者を、医療機関へと搬送する場合、下のような二通りの方法が考えられると思われます。
[1] 救急車による搬送
[2] それ以外、自家用車、タクシーなどでの搬送
 以下、具体的に考えみましょう。
 
 救急車による搬送
 熱中症のV度程度の症状がある場合や、事情により別な搬送方法が行えない場合など、119番通報(直接に消防署への通報も含む)を行う前に、通報の前に下の内容を確認しておくことが大切なものとなります。これは事故になる前に確認をしておく内容も含みます。

[1] 熱中症になった者の状態
  (意識の程度、呼吸、脈拍、顔色、体温、手足の温度など)
[2] 熱中症になった者のプロファイル
  (名前、性別、年齢、住所、連絡先、運動歴、身長、体重)
[3] 熱中症になった際の環境の状況
  (活動開始時刻、気温、湿度、活動内容など)
{4} 事故発生場所の詳細
  (住所、連絡先、その場所の目安、行くための手順など)

 次に、連絡通報を行いますが、可能な限り事故発生から迅速に行う必要があります。そのため、通報のための手順や手間を、出来る限り少なくしておくことが適切と考えます。危機管理対策ということになるかと思います。